着物と草履のせいで走りづらい。 でも、捕まるわけにはいかない。 「あっ!」 捕まりたくないという気持ちが足を縺れさせる。 足が縺れたせいで、僅かに派手に転んでしまう。 「痛っ」 膝を擦りむいたのか、膝が痛む。 その痛む膝を庇いながら体を起こすと、視界に影が差す。 「追いついたぞ、女」 振り向かなくても分かる、あの男だ。