「ねぇ、下っ端くん。あんたたちがまだ、存在できているのって、私の恩情のお陰だからね?あんたたちみたいなの、大嫌いな人が潰しに来てもいいなら、遠慮なくヤりまくって良いけどさ」


沙耶の足は向かってきた下っ端の腹に沈み、下っ端はうずくまった。

ゲホゲホと咳き込む、下っ端くんの前にしゃがみこんだ沙耶は、横目でトップを見る。


「いい加減にしないと、お兄ちゃんに言っちゃうよ?それ以前に、私が潰そうか?それでもいいけど」

沙耶の兄貴の一人、勇真は意外と有名で。

アイラたちが消えたあと、大樹兄と共にヤンチャをしていた。

それは、もう、強くて。負け知らずで。

「それは、勘弁…」

有名だから、彼は青ざめる。

「なら、節度くらいは守らせなさい」

「…はい」

急におとなしくなった彼とは、ここに入学してすぐに出会ったから、初めてあってから、もうすぐ一年くらい経つ。

初めは、こいつも相当なクズで。
蹴り飛ばしてから、おとなしくなったが…。

「女の子と不純異性交遊するのがいけないんじゃないよ?女の方も望んでいるなら、いくら遊んでも良いの。でも、泣いている女を組み敷くのはダメ。その子の人生をボロボロにするでしょ?」

「…」


―…弱くなった気もする。

彼の自信を、ことごとく潰してきた結果であろうか?


「お兄ちゃんたちもねぇ、遊んでるよ?それは認める。あの二人がいつ結婚するのかは、妹からしてみれば、一生ないかもと思えるほど。いや、最近はしてないとか言ってたな…本命がなんちゃら…」

「え、勇真さんたちに本命!?」

「…驚くとこ、そこなの?」

勿論、初めて知ったときは沙耶も驚いたが、こいつほどではない。

「どんな女性だった?」

ほら、こんなことを聞いてくる時点で…

「いや、あったことないし」

結構、ヤバイ気がする。

「…あんたのその勇真さん大好きぶりには、最早、呆れるわ…って、私はこんなことを言いたい訳じゃなくて」

お兄ちゃんの色恋沙汰で話がそれた。


「お兄ちゃんたちでも、無理矢理は無かったわ。本命には、あれだけど」

「…」

あれ、そこ引く?


愛情表現が不得手の兄達は、本命にはどんどんいくらしく、大樹兄の本命は超知り合いだけど、勇真兄の本命は全く知らないので、あってみたいと沙耶は望んでいる。

まぁ、もう少したったら、会えるだろうが。



…って、本当にこんな話はどうでもよくて。