「やっ、やめて……草蘭っ!草蘭!」


過去の娘の名前を呼ぶ、沙耶。


「連れてかないで……っ!!その子を返して!」


泣き叫びながら、我が子を求める。


手を伸ばす。


何もない、空中へ。


そして。


「……っ、ぅし……どうして……どうしてよぉ………っ!!」


泣き崩れるように、腕を下ろした。


両手で顔を覆い、泣きじゃくる。


壊れた人形のように。


普段の沙耶からは、考えもつかなくて。


「泣くなよ……」


俺は、何度もその言葉を繰り返す。


「うっ……ふぇ……」


けれど、何度言っても、泣き止まない。


「沙耶!」


力強く、肩を掴んでそう呼べば。


「……もう、駄目だよ……」


沙耶は、そう呟く。

涙を流しながら、らしくもなく、俯いて。