□相馬side■





まさか、気付いているなんて。


そんなこと、気がつかなかった。


『鳴海、秀征』


沙耶がそう言った瞬間、忘れさせなければと思った。


弱い、弱い、光の持ち主。


「……甲斐、今日は沙耶は俺んちに泊める。沙耶の家族が今日、何しているのか調べ、場合によれば、説明していてくれ」


「はっ、」


開けられたドア。


ぐったりとした沙耶を抱いたまま、俺は車から降り、部屋に帰る。


独り暮らしのこの部屋には、女は誰も入ったことはなく、入っているのは沙耶ぐらい。


夏翠ですら、入ってこない部屋。


そこに、沙耶はいる。


……意識はないけれど。


自分のベットに沙耶を寝かせると、沙耶は涙を流した。


頬を伝ったそれを、拭っても。


「ん……」


また、溢れ出す。