「夕蘭……」
叫ぶのは、貴女?
それとも、私?
「愛してる、」
告げられる、愛の言葉。
「護るから、今は眠れ」
眠れなくて、ずっと、ずっと、眠れなくて。
相馬が側にいるときだけは、夢を見なかった。
「抱いててやるから……もう、眠れ」
記憶が、意識が、遠ざかってく。
心もとない、手が宙を舞う。
最近は、相馬のそばで寝てばかりだ。
彼の手は、優しくて、暖かくて……
「沙耶、お前のことも、守るから」
彼に、背負わせてはいけない。
夕蘭はともかく、“黒橋沙耶”の復讐を。
分かっているけど、今だけは。
(相馬……)
孤独な彼が、愛しい。
(見たくなかった)
貴方を愛した記憶なんて。
さすれば、気づくことはなかった。
(貴方が好き……)
瞼が、落ちていく。


