「ごめん、なさい……」
口元から、零れてく。
ふっと、相馬が何かに重なった。
私の首に触れた、気持ちが悪い手の持ち主。
「……ひっ!」
怖い。怖い。怖い。怖い。
……これが、貴方が隠しておきたかった、記憶ですか?
ぼやける脳内に、映り込む男。
(やめて……私に、触れないで……)
「……鳴海、秀征……」
そんな、名前、私は知らない。
なのに、口から知っているように、出てくる。
「鳴海……っ、まさか、」
相馬の顔色が、変わる。
視界を隠される。
「忘れろ、沙耶。思い出すな、お前は……っ」
涙が、流れ、落ちていく。
「……眠れ。眠って、忘れろ、」
(……嫌)
眠りたくない。
眠ったら、また、見てしまう。
「やぁ、っ……」
相馬の服を掴んで、首を振る。
眠りたくない。眠りたくない。
「……っ、お前は……」
苦しまないで。
私のことで。
笑っていて、貴方の笑顔が好きだから。
「草志、……っ!」
私は、何をしたかったのだろう。
消えたくて、消えたくて、死を望んで。
目を見開く彼に、何がしたかったのだろう。
完璧に思い出せれば、貴方は笑ってくれますか?
忘れろと言う、記憶は、貴方を救えますか?


