「沙耶!」 私の名前を呼ばないで。 私は貴方に縋ってしまう。 私の前に現れないで。 私は貴方を傷つける。 「何があったんだ!?薫、姉さん!」 響く、相馬の声。 私は首を振った。 彼の腕は、安心してしまう。 思い出してしまう。 『愛してる、夕蘭』 少しの間でも、貴方に愛された記憶を。 何度、あっただろう。 目覚める度に、濡れた枕。 何かを忘れたような、喪失感。