「……お前、記憶あるのか」
薫の言葉。
私はゆるりと、首を振る。
「……あるんだろう。だから、そんなことを……」
「……無いわよ……だって、ちょっとしか、思い出せないもの……」
小さい頃から、夢を見た。
大好きな人に、愛される夢。
幸せで、幸せで、夢の中にずっといたいって思うほど。
「自分の最期なんて……」
……あれが、最期?
分からない。知らない。
相馬が知られたくないということを、私は知らない。
相馬が何を知られたくないのか、分からない。
何かを、隠してる。
相馬は……草志は。
朝陽を失い、アイラが消えたあの日。
私は全く、夢を見なくなった。
いつしか、存在だって、忘れていた。
けれど。
「相馬がっ!私の前に現れなければ……っ、私は、忘れたままだった……っ!!」
愛される、記憶。
夢がつまった記憶。
私の妄想だと、思った。
けど、それは、真実の”愛”で。
「愛される記憶なんてっ、私には、相応しくない!!」
人の愛を奪ったくせに、
愛されたいと叫ぶ、傲慢な私。


