『俺らが、敬愛する人です。だから、大事に育ててくださいね。俺らにとって、大切な存在だから』


10歳児の発言ではなかった。


“姫”について、語られる話。


……嘘だとは思えない話だった。


おまけに、起こっている事件がすべて、人の力では説明できないものばかりだったから。


それだけで、俺らには希望が出た。


復讐できる相手がいるのだと。


殲滅したあいつらは、『命じられた』と言った。


その命じた人間が、彼らの命を狙っていると言う。


10歳前後の子供のことを。


だからこそ、大人が守り抜かなければならない。


夏翠の前世が彼等の仕える主で、焔棠の始祖と言うのなら、焔棠分家である姫宮の始祖でもある。


何より、大人が子供を守るなんて、当然のことだから。


これ以上、大切な人間の命を奪われるわけにはいかなかった。


だから、いろんな手を使って、守ってきた。


今、目の前で眠る沙耶ちゃんは、前世で罪をおかしたと言うのか。


だから、記憶もないのに病気で苦しんでいると言うのか。


……そんなことが、あっていいのか?