「……なんで、捨てるんだよ」
最後の愛情。
暖かい日に、[姫宮児童養護施設―未来園―]の看板の下に子供を捨てていく、お母さん達。
育てれば、良いのに。
10ヶ月も、守り抜いた命なんだから。
胸を張って、生きれば良いのに。
子供を捨てる大人達は、所詮、自分の存在をちっぽけなものとして見ている。
そういう行為をし、できた子供が邪魔ならば、すぐに殺す。
堕胎という方法があるのだ。
……昔とは、違って。
それでも、薬を飲まず、寝返りには気を遣って、守り抜いてきた子供。
苦しみながら、生んだ子供。
方法はあるのに、使わなかったのは自分が罪人になるのが怖かったからか。
それとも、愛していたからか。
ここで育つ子供達は、母親に淡い期待を抱く。
『お母さんに会いたい』と、嘆く子供もいる。


