「…私なんか、じゃないよ。ここは、ありがとうだけでいいの」


私の言葉に目を見開いた、真姫。
そんな真姫の頬を両手で包み込む。


「なんか、放っとけないね」


小動物みたいな真姫は、ますます驚いて。


「…ぇっ、と…」


微かにだが、声を漏らす。
天使ボイスというのだろうか。
女の子独特の声が、沙耶の鼓膜を刺激した。


「沙耶」

「ぇ…?」


彼女に見えるように、口を動かす。


「沙耶、でいいよ。私も、真姫って呼ぶから」

「っ、は、ぃ…」

掠れたような声だが、聞こえた返事は嬉しそうで。

「私、浮いててさ。あんまり、友達がいないんだけど…だからこそ、真姫と友達になれて嬉しい。これから、よろしくね?」