「……わからないんですね」
「……悪い。力になれなくて……」
「いえ、あなたでも分からない病気は、他の人にはわかりませんから。すいません、変なことを聞いて」
慈愛、いや、愛情に満ちた瞳。
彼は、気づいているのだろうか。
自分がどんなに愛情を込めた瞳で、彼女を見ているかってことに。
「……その子、なのか?」
ふと、ついて出た言葉。
「……」
相馬の悲しそうな顔が、答えだった。
幼い頃、多くの子供達がいっぺんに生まれ、この病院に入院するものが多くて。
沙耶ちゃんも、夏翠も、その時にこの病院で生まれた。
何百の命が生まれるこの病院……あれは、もう、18年前の話。


