病気じゃないわけではない。
確かに悪いところがあるから。
ただ、病名自体がなかった病気だっただけで。
ふとした瞬間に、呼吸をやめるもの。
これが、喘息ならまだ、良かったのに。
薬がないから、治療のしようがない。
おまけに、何もできないくせに、この時、僕にわかったのは、この子は長生きができないだろう。
……それだけ。
何とも惨めで、今までやって来たことが馬鹿馬鹿しく思えるほどのことだった。
彼女は、何回も運ばれてきた。
彼女の両親は、娘を救えない医者である僕を信頼してくれた。
『先生は優秀ですけど、医者が全員、万能というわけではありません。貴方は、沙耶のことを一生懸命、診てくれる。ですから、何があっても、貴方を責める気はありません』


