「本当、忙しい夫婦だわ」


ぶちギレたら、怖いランキング一位のお母さん。


敵に回したら、面倒臭いランキング一位のお父さん。


「フフ、沙耶の家は面白いね」


両親を送っていくと、共に出ていった相馬の背中を見送った後、夏翠が笑いながら言った。


「えぇ?夏翠、そう見えるなんて、視力やばくない?」


「全然、良いわよ?」


他愛もない話をして、過ごす。


三週間目を突入した、入院生活の過ごし方。


「……それよりさ、夏翠、時間は大丈夫なの?」


「今夜、接待があるけど……大丈夫」


「いやいや!準備とかは?」


時刻は、午後四時。


「平気、平気」


適当に言う、夏翠。


私もこういうところがあるが、この子も相当である。


「行きなよ!大丈夫だから!」


「えー、面倒」


「いいから!また、来てくれると嬉しいし……すぐに退院するから!」


しぶしぶって感じで、夏翠は立ち上がる。


そして、むくれ顔で呟いた。


「……沙耶もわかると思うけど、今回の接待、お見合いみたいなものなのよ。私には、飛鷹がいるのに……」


「うっ……あの、面倒なやつね」


お嬢様というと、なにかと厄介だ。


家のために、見合いをさせられるから。


例え、本人が望んでいなくても。


「そう、面倒なやつ。……でも、ま、それくらい、自分でどうにかできなきゃ、当主になるの資格はないけどね」


そう言える夏翠には、素質があると思う。


姫宮のトップとして、やっていく素質が。


「ごめんね、また、くるね」


若干、疲れがたまった感じの夏翠は、そう言って、帰ってく。