「……お母さん、お父さんはこんな人よ」
……自分よりも、妻を優先する愛妻家。
確かに、こんな言葉がふさわしい。
沙耶は、父親の性格をよく理解している。
だからこそ、割り切れているのかもしれない。
「…………それでも、大切なことは教えて?娘のことだもの。私は、知っておきたいの」
お父さんの一言に負けたらしい、ユイラさんはそう呟く。
「堪忍。次は、気ぃつけるわ」
病室の端で、ユイラさんを抱き締めた健斗さんを見て、
「絶対に嘘だ。居場所も知らせない奴が、母さんを奪うかもしれない情報を教えるかっての」
沙耶はそう、呆れたように呟いた。


