■千歳side□



相馬が、慌てた。


帝王学を学び、いつも、気持ちが悪いくらいに冷静な彼を乱した、一人の女。


彼女はいつでも、どこでも、どの世界にいても、相馬を振り回す。


「……沙耶は、病気ではないだろう?」


隣を歩く、沙耶の幼馴染み、柚香に訊ねる。


俺の前世の女で、桜の前世、桜華の姉の桜蘭の転生後。


柚香は、振り向いて。


「昔は、病気だったんだ。身体が弱いのは、生まれつきだけど……喘息みたいなものを持ってた」


何が引き金になるとか、そんなものはない。


ただ、よくわからない場所で、急に発作を起こす。


それが、沙耶の病気だった。