規則正しい呼吸をし始めた沙耶が、目覚める気配はなく。
「病院、行った方が良いよな……」
呼吸困難になったんだ。
念のため、診察は受けた方がいい。
すると、柚香が。
「沙耶は生来、病弱だから。この呼吸困難も、昔からあるものだし……」
「病弱?」
まさかの単語に、目を見張る。
「普段の沙耶からは想像もつかないでしょう?」
苦笑する柚香は、沙耶のことをよく知っている。
「こいつ、身体が弱いのか?」
「うん。発作を起こすよ。昔は、よく起こしてた。その度に血走った目で、自分を責める。『負けるな、”私“はそんなに弱くない。弱いのはだめ』ってね。ずっと、傍で見てきたから知ってる。それもこれも、朝陽さん達が……」
「……朝陽?」
「あっ、……えっと、いや、何でもない!」
思い出したように、首を横に振る柚香。
聞き慣れない沙耶の周囲に、珍しく男のにおいを感じたので、訊ねただけなのだが。
「本当に何でもないの!だから、気にしないで!」
必死に”これ以上聞くな“と全身で表現する柚香を見ながら、不思議に思いつつも、俺は珍しく、ぐったりとした沙耶を眺めていた。


