「まだなの!?」
人だかりができ、担架がどこにいるのかすら、わからない。
「……沙耶?落ち着いて、深呼吸して。分かるよね?ほら、ゆっくり、ゆっくり……」
沙耶の身体はいつ、どこで、何が起こるかわからない。
だから、どんなときでも沙耶に対処できるように、一応、一通りのことは、沙耶の両親に習っていた。
(……習っていて、良かった……)
「ごめ……っ……」
人に遠慮しがちな、沙耶。
過去のことが、彼女を追い詰めるのだろうが、それでももう少し、頼ってほしい。
そう、例えば……
「沙耶!」
……こういう、男とか。


