私は、一般家庭生まれだ。
沙耶の家みたいに、お父さんは社長じゃないし……(どこで何しているのかは、漠然としか知らないが)お母さんは綺麗だけど、ユイラさんよりは美人ではないし……(新しい旦那と仲良くいっているのか……いっていないと思う。お母さんはあんな性格だから)
ぶっちゃけて、私は暖かさを知らなかった。
――親に愛されるということだって。
生まれていたときから、両親の仲は悪くて……5歳、6歳ぐらいの頃、沙耶と出逢った公園の真ん中の岩山の中で、毎日、一人、私は泣いた。
悲しくて……祝福されない誕生日を、一人で過ごすのはとても辛くて。
『お誕生日、おめでとう!柚香!!』
初めてあったとき、そう言ってくれたように、沙耶は毎年、プレゼントつきでお祝いしてくれる。
離婚した両親の代わりに、
家に帰ってこない父親の代わりに、
消息不明な母親の代わりに、
沙耶はたくさんのことを教え、愛してくれる。
ウェディングドレスに憧れてた、あの時期。
ただ、親の言うことを真に受けて、信じていたあのときは、もう、夢のように遠い。
裏切られたあの日、私は夢を見ることをやめ、沙耶を守ることに決めた。
私は、沙耶のように強くなんかないけれど、沙耶を守りたいと願っているし、そばで親友として見守っていきたいと願っている。


