「お前には、かなわないよ」


炎樹は一筋の涙を流して。


「――……認めるよ」


強く、美しかった。


主に重ねていた。


けれど、それよりも。


「お前は、月姫じゃなかった……」


炎樹は顔を手で覆って。

涙は頬を伝って。


「――……お前が好きだった、愛してた」


静かに床に落ちた。


そこには、憎らしいくらいに力を表す炎の花が咲いた。


それを見て、思う。


(人間だったら………)


炎樹は巫女の髪に触れ、愛しげに目を細める。


どのくらいの時すらも忘れられる。


トン、と、背中を押してくれるのは、誰の手だろうか?


耳に唯一届いたのは、懐かしい笑い声。


――……愛しい人の声だった。