□沙耶side■




「――……で、この世界に来たって訳だ」


「はあー」


話したいと言われた話は、とても重くて。


確かに、非現実の話である。


「最後まで、聞いて、思ったことだけど……」


確かに月姫は、悪い子だったのかもしれない。


それでも、みんなに愛されていたのだ。


それで、良いじゃないか。


結果的には、すべてうまくいって……なかったんだっけ?



「……私は、月姫を悪く言えない。だって、単純に正解と思って進んだ道が、間違いだっただけじゃない。その間違いを、間違いとして、正す余裕もくれなかったのは、あんたたちの方でしょう?何百年生きても、女の子は、女の子なの。男に背負いきれるものでも、女には重いのよ」


「……」


「それに、良い子じゃない。自分のせいでもないのに、泣くなんて」


人を喪って、泣く。


当たり前のことかもしれない。


それでも、彼女はそれが当たり前じゃなかった。


見下して当然だった人間を想い、涙する。


素晴らしい、愛の形だ。


そう思うのは、私が異常だからだろうか?


悩んでいると、相馬の笑い声が聞こえた。


「お前は、おんなじことを言うんだな」


「は?」


「……夕蘭と」


彼の顔に、闇が漂う。


「もしかして……それが、あんたの愛した人?」


彼らは、話のなかで“姫”を守護するものだった。