『沙耶ちゃん、自分のことも描いてね。沙耶ちゃんの大事な家族にプレゼントして……』 先生が、絵を沙耶に返そうとすると。 沙耶はゆるりと、首を横に振って。 『違うんだよ、先生。これでいいの。これが正解なんだよ。私は、大兄ちゃんから、朝陽とアイラを奪ったの。だから、私のお父さんとお母さんをあげるの。これで、大兄ちゃんも寂しくないよね。だから、これが正解なんだよ』 清々しいほどの沙耶の笑顔は、 先生の笑顔を 凍りつかせた。