”御園相馬“


なんて、自分勝手で、最低な男なんだろうと思った。


けど。


この時ばかりは、彼が小さく、小さく、見えて。



愛してほしかったと嘆く、


幼い子供に見えて。



「相馬、おいで?」


来るか来ないかも分からない、多くの犠牲を払わなければ手に入れられない未来を、彼は追い求め続ける。


何を傷つけても、


自分の身を削いでも。



自分よりも大きな、そんな彼を抱き締める。


「……沙耶?」


目を見開く、あなた。


「出来るよ」


私は、彼の中に小さな彼を見る。


幼い相馬。


彼に微笑んで。


「誰よりも、優しい貴方なら、大丈夫」


初対面では、イラついた。


でも、そのあとからは私を救ってくれた。


嫌な顔をしても、あなたは弱い人を見過ごさない。


最低なことをしても、人の涙を誰よりも嫌うあなたは、誰よりも、誰よりも、優しいと私は思うから。


「貴方が願う未来を、私も見てみたい」


表の姿に繁栄を。


裏の姿に滅亡を。


頼らなければ、生きていけないなんて、誰が言ったんだろうね?


私が過去の傷を抱えるように、あなたも抱えて。


そっくりな私たちは、


お互いを守るように、


抱き締め合う。


「私はね……」


まだ、過去を話す勇気はないけれど。


あなたの傷を癒す手伝いはできるから。


私の生きる目標に、


彼を守りたい。




……それが、加わった。