□沙耶side■




「……シカトされてる、あんたは知らないかもだけど、暗黙の了解で彼らはみんなのものってことになってんの」


「好きでも我慢してるんだから、近づかないでよ」


お昼休み。


貴重な時間に呼び出されて、なにかと思えば、三度の飯より下らないこと。


「はっ、何の努力もせずに、“みんなのもの”ですかい。あいつらがどんな性格かも知らないくせに、そんなの、見た目でキャアキャア言ってるだけじゃん?特別視しないで、話しかければ?こんな、時間無駄遣いに人を巻き込むんだったらさ」


本気で迷惑な話である。


「……っっ、うるさい!あんたなんかっ!!!」


自分で言うのもなんだが、言い争いで、今まで私は負けたことがない。


そのせいで大抵、最後には相手が怒ってしまい、下記のことが起こる。


水あび、ビンタ、泣き落とし、睨み付け。


……正直、どれも効かないのだが。


兄が兄であるからゆえか、大したことがない限り、私は泣くことはない。


考えてみれば、もう、数年、泣いていない気がする。


人前で泣くのが、嫌なのだ。


弱味を見せているみたいで。


そんな中で唯一、泣ける相手の柚香は特別な存在。


ぶっちゃけると、この今の状況は私にとって大変めんどうくさく、どうでもいいことである。