「えー、私もほしい」


私につられてか、澪も言った。


「……んなこといって。相模のこと、捨てられないくせに」


その言葉に、夏翠が呆れる。


「もしもの話でしょ!」


膨れる澪は……うん、可愛い。


「あ、そうだ!ねぇ、沙耶」


「んー?」


周囲に集まった異常な集団を眺めながら返事すると、夏翠が首をかしげながら、言った。


「いや、今日さ、澪と一緒に相馬の車に乗せて貰ったんだけど……」


「え、運転手は?」


「京都に帰っちゃったんだよね。飛鷹もなんか、会議とかあるとか言って、先に学校に行ったし」


「桐生先生なら、朝、会ったよ~。なんか、他の先生とバタバタしてた。大変なんだね、教師って」


「うーん、どうだろ。仕事くらい、父さんの仕事の補佐をしていた飛鷹には、苦じゃないと思うよ」


確かに、世界経済とどこにでもいる教師の仕事を比べれば、その差は絶大であろう。