「御馳走様!」
こいつが笑っていてくれるだけで、
「どうした?人の顔をじっと見たりして」
それだけで、
「……何でもない」
心が暖かくなる俺は、可笑しいのだろうか。
「変なの」
クスリと笑った沙耶は、立ち上がって。
「お腹も一杯になったし、帰ろっか」
……運命は、曲げられない。
何を思っても、どう考えても。
変えられないのだ。
惹かれ合うのは、宿命だから。
夕蘭を愛したことが、
俺の運命の一つだったと言うのなら。
いつか、この女を愛すことになるんだろう。
過去の悲しみが消え去ることはない気がするけれど、いつか。
いつか、その時が来たならば。
俺は、素直に伝えることができるだろうか。
彼女に、
前世みたく、失敗しないように。
“愛してる”
……その一言を。


