「沙耶、お腹、すいたの?」


「うん。だって、お昼ご飯が早かったんだもん」


現在、時刻は7時過ぎ。


まぁ、なにもしてなくても、お腹はすく時刻である。



「ってことで、食べて帰るから。またね、夏翠」


目の前に揃った面子よりも、腹が減っているという事実のほうが大事らしい沙耶は、言いながら、歩き出す。


「おいっ、ちょっと、待て!」


だからといって、こんなところに置き去りにされる相馬くんではなく。


聡いからか、この先の状況を理解できるらしい。


「えー、お腹すいたんだってば」


唇を尖らせる、沙耶。


「俺も連れてけ!」


どんな手を使っても、この場に残りたくないらしく。


「えぇー、面倒」


「つべこべ言うな!何でも、奢るから!」


「えっ、マジ!?じゃあ、いいよ、行こ」


……うん、よもや、お嬢様ではない。


奢られると嬉しそうな沙耶は、相馬の手を引いて、歩く。


相馬が女と歩いているなんて、よく見る光景なのに、違和感ばかり、沸き上がる。


「うん、強者ねー」


笑いすぎてでた涙をぬぐいながら、真琴さんはそう言った。