「京子が転校させたのも、全て、あんたのためなんだからね」
「……」
「あんたが少しでも笑えるように、生きていることを楽しいと思えるように、京子は尽力しているの。そんな京子の気持ちを、踏みにじっちゃダメだよ」
……そんなこと、言われなくても、分かってた。
だからこそ、嫌なのだ。
忘れられない、絶望感。
赦せないと、あの日からたぎる憎悪。
「……さ、もうすぐ、着くよ」
そんな醜く、汚い感情を忘れられたあの一瞬。
この瞳に映した、愛する人の転生姿。
(沙耶……)
街を出るまでは、あんなに会いたくなかったのに。
沙耶がいるから、その学校には行きたくなかったのに。
前世ほど、彼女のことは知らないのに。
(俺は、母親を追い求めているんじゃない……)
今も、昔も、”夕蘭“を追い求めているんだ。
そして、転生姿の沙耶に惹かれかけている。


