相馬は五人兄弟だが、やはり、女は姉さんの京子だけ。
他は全て、男である。
母さんが死んで、父さんがいなくなってからは、兄弟で家を守っているが……兄さんは体が弱く、入院しているので、実質、家を仕切っているのは姉さんで。
「京子は、幸せな結婚とかを望んでないよ」
かつて、姉さんにも好きな人がいた。
幼馴染みの男で、年はだいぶ、上だったけど、お似合いの二人だった。
母さんがあんなことをしてから、姉さんはその夢を諦めた。
幸せな結婚することも、その幼馴染みの子供を産むことも。
この家を背負えるのは、自分しかいない。
彼女は、その使命感でいつも動いてる。
「相馬は知ってるでしょ?京子が、発作持ちのことも、何もかも。なら、過去から逃げてちゃ、駄目じゃない?向き合え、とは言わないわ。それは、過酷だからね。でも、せめて、ずっと、母親を追い求めるのは、和子さんを重ねて、女を見るのはやめなさい」
姉としての、言葉。
それは、相馬の心に重く、のし掛かる。


