「いや、そういう問題じゃ……」


「いちいち、うっさいわ。ほら、はよ、これに目ぇ通し」


相変わらず、横暴な姉である。


「はいはい……」


突っ込むのも、流石に何年もやっていたら疲れてきたので、とりあえず、言われた通りにすることにした。


「……これ」


封筒を開け、愕然とする。


「華西高校への編入届けや。書いといてな」


ニッコリと笑う姉。


「誕生日プレゼントや。嬉しいやろ?」


転入=仕事を減らしてくれる……確かに嬉しい言葉だった。


だが。


(あの女がいるじゃないか……!)


姉さんの笑顔は、その時、生まれて初めて本物の悪魔に見えた。


確かに俺はこの国では権力者だけど……姉の持つ、姉という権力にだけは逆らえそうにないと、肩をおとした。