■相馬side□



遠い、遠い、昔の記憶―…



「草志!」


質素な服。

長い髪はひとつに纏め上げ、団子になっていて。


頬にまで泥をつけて、全体的に泥だらけの彼女は、俺の名を呼んだ。


「どうした?」

「あのね、これ見て!」


彼女が手を開いて見せたのは、小さな花の種。


「また、今年も春が来るね」


冬の寒さが薄まる時期。

夕蘭の笑顔が俺にとっての暖かな日だまりだった。