「……教えてくれないか?」 そう、言った。 「……なにを?」 主語がないその言葉には、それしか返せなくて。 「……お前は、何を望む?」 その瞬間、彼は信じる人だったのだと思った。 傷ついた顔で笑う彼は、かつては、誰かを一心に信じていたのだと感じたんだ。 それが真実だと思って、前を向くあの強さ。 裏切られ、一度失ったら取り戻せないあの感情。 沙耶も、よく知っている。