黒橋グループの総帥が動くとなれば、相当なことだ。


「―…なんだ?それ」


自然と口から出た言葉。


自分でも訳がわからなかったが、彼女の震えていた手、
何故か、忘れられない悲しそうな沙耶の顔。


それを思うと、言葉が出ていた。


「クスリ、レイプ、その他諸々」


「……」


……上がってきた、犯罪の名前に目を見開いた。



「これをする人間は、全部、沙耶たち家族によって消されたわ。この間、夏翠たちが同じ状況に陥っていたらしいけど……沙耶があんなのですむのは、珍しいのよ?再起不能まで、叩きのめす。ブツは勿論、顔だって」



きれいな顔をしていた。


幼い頃からたくさんの美女を見てきたが、沙耶だけは特別に見えるほどの綺麗な女だった。



そんな女が?



そんな相馬の顔を見て、察した柚香は、


「人は見た目ではわからないでしょう?沙耶は良い例だもの」


と、悲しそうに微笑んだ。


「沙耶の動く理由は……女を一方的に蔑まれるのを嫌い理由は…全て、家族のことにある」


友達があまりいないらしい沙耶が、望むこと。


「それは、家族がずっと笑っていられますように」



結婚でも、出産でもない。


仕事での出世でも、夢でもない。


彼女が望むのは、そんな平凡。