「あんたの過去に何があったかなんて、知らない。知ろうとも思わない!けどね!?」



相馬の頬に止まっていた沙耶の手が、静かに力なく落ちた。


「……だからって、言っても良いことと悪いことがあるでしょう?」


そこで初めて、相馬は自分の発言が間違っているときがついたみたく、口を手で覆った。


「……先に戻る」


恐らく、彼の本音だったのだろう。


女をあそこまで憎むなにかが彼にはあったのだ。


それでも。


『女なんて、そんなもんだろ?』


……その言葉だけは、言ってほしくなかった。


彼の言葉は、沙耶の心に深く突き刺さった。