「チナミはもうセンターの過去問やってんの?」




アヤノがわたしの机を覗きこむ




「実際の受験と同じことしないとやる気出ないしね~」



「ふーん」


アヤノは古文の問題集を解いている



今昔物語集の巻廿七第24話「人妻死後会旧夫語」だった


出世した男が出世と同時に別れた前の妻を恋しくなって死んだ前妻の霊を抱く話



補習で取り扱っていたとき他のクラスメイトが「キモい」とか「ホラーだわ」とか言っていた




そんな気味の悪いオチの原文を、やや切なそうにアヤノは眺めていた



いつもアヤノは問題をガリガリ解いていくタイプなのに珍しいな





「それ解読できた?」


原文の意味が分からないなら教えてあげようと声かける




「大体は分かるんだけど」



アヤノはちゃんと読めてたらしい



「この話にドン引きしてた」




クラスメイトたちと同じ感想を抱いてたらしい