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今でも、覚えてるよ。



君と私が出会った頃の話。



それは2、3年前の話だったよね。



まだデビューしたばかりで、つたないダンスや歌を歌っていた君たちの一ファンとして出会った。



初めて、異性をあんなに綺麗と思った。



初めて、惹き込まれた。



自然と流れ出た私の涙を見て、君は優しく拭ってくれた。





〔どうしたの?大丈夫?〕





仮にも芸能人なのに、人目を気にせず心配そうに覗き込む君の顔。



彼らと、シイナと出会って、私の人生は変わったんだ。



それからは、彼らの練習スタジオに入ることが多くなった。



汗まみれで、踊り歌う彼らは本当に綺麗だった。



たくさんのファンがいる中、唯一スタジオに入ることを許されたのは私だけだ。





〔彼らが、シイナが貴方を信用している、と言っているので〕





そう言った彼らのマネージャーさんの笑みを、忘れない。



シイナからのその言葉がどれだけ嬉しかったことか。



その頃、私はシイナが好きだったから。



サラサラな透き通るほどの黒髪。



少し目にかかる前髪。



赤いピアスに、中性的な顔立ち。



目の下のホクロに、笑うとくしゃっとなる顔。



無邪気で、優しくて、穏やかで、でもかっこよくて。



彼らと一緒にいるうち、自然と目を追ってしまう人物。



shiinaとしてではない、誠椎名─マコトシイナ─としての彼を好きになったんだ。








─────それから、何ヶ月して。



シイナに告白された。



気持ちを知った時は、とても嬉しかった。



ファンの人への罪悪感は、あったものの、シイナからの気持ちはとても嬉しくて、その日は一日中舞い上がっていた。



人目につかぬように、キスやデートをしたりして。



とにかく、毎日が楽しくて。



とても幸せだった。








でも、少し幸せすぎたのかな─────。









〔ねえ、お前誰が好きか分かってんの?〕


〔俺が好きなのに他の奴と喋ってんの?〕







────あの日は、土砂降りだった。