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「じゃあ、俺仕事行くけど、

今日もいい子にしててね?」





無邪気に、だけれども妖艶に微笑む彼。



一体何万人もの人が、彼の笑顔に騙されているのだろう。



人差し指を、口元にかざし彼は優しく笑んだ。





「もしまた逃げたら、

俺お前のこと殺しちゃうかもー」





そんな言葉を軽々しく口にする彼。



「…なんてね♪」と再び、画面の前でだけ見せる薄っぺらい笑いをした後に彼は、私を縛る道具達を右手で撫でた。





「お願っ、い…これ外してっ…」





久しぶりに出した声は、掠れていた。



──パンッ



部屋に乾いた音が響いた。



直後じんじんと痛む、左頬。





「いったい…っ」




「お前って馬鹿なの?外すわけないじゃん。
────それとも何、」





冷めた瞳が私を真っ直ぐ、貫く。



髪を掴まれ、痛みに小さな息が漏れる。





「俺のこと愛してないの?」





鋭く見つめられ、目を背けることもできずに。



私は、小さく呟いた。





「愛、してるよ…」





その言葉に、彼は満足気に笑うと、掴んでいた私の髪から手を離した。



そして、先程叩かれ腫れた頬を優しく撫でる。





「俺も愛してるよ、レノア──」





柔らかく笑う彼は、とても綺麗だ。



彼は、私の額にキスを落とすと、二重に出来た部屋のドアに手を伸ばす。



キィ…、という音ともにドアの隙間から光が漏れた。



何ヶ月ぶりだろう、光を見たのは。



パタン、としまるドア。



────彼が居なくなる。





「も、嫌だっ…」





彼が居なくなった安心感なのか、何度も流した涙が溢れ出た。



いつからこんなことになったのだろう。



戻りたい、笑いあってたあの頃に──。







「お願いっ、ここから出して────。」






もう、限界だよ。



タスケテ