その時、微かな声が聞こえてあたしの背筋はピンと跳ねた。
『…じゃあ後で、話があるから会ってくれる?』
『…分かった』
里中と、星花さんの会話。
この後二人、会うんだ。
どうせなら今話せば良いのに、なんて。
無理か。そっか。
里中はあたしと帰る約束してるから。
だから今じゃなくて、後で。
あたし、二人の邪魔してる?
あたしの想いは迷惑でしかならないのかな。
最初から、今も。
『じゃあね、泉』
此方に向かって歩いて来る星花さんの足音が聞こえて。
あたしは咄嗟に教室の斜め前にある階段を駆け降りた。
そして、さも“今上って来た”と言う素振りを見せる為にゆっくりと階段を上り始める。


