あたしはそこに付け込んだんだ。里中の正義感と優しさに。


なんて卑怯で狡い。
残酷なのはあたしも同じだ。



「…あたし、泉とやり直したい」


「……。」


「だけど、橋本さん泉と別れないよね?」


「…っ」



「でも、橋本さんなんだよ。

あたしと泉が両想いだって事教えてくれたのは。確認させてくれたのは」



「……。」



黙っているあたしに、星花さんは少しだけ困った様な顔をすると

“じゃあね”

身を翻して教室の方へと歩いて行ってしまった。



あたしは、動けなかった。
ただ悔しくて、情けなくて。


憤りに似た感情がぐるぐると巡り頭と心を支配する。



何で皆、そんなに勝手なの?


好きにして良いって態度では見せているくせに、いざとなったらあたしに遠慮しろって忠告してくる。