休み時間なだけあって教室の中は騒ぐ生徒の声で溢れ返っていた。


男子がボール投げでもしているのか
たまにソフトボールの白い球が視界の端を行ったり来たりする。


そんな中、教室の隅の方にふと視線を遣ると。


椅子に座ったまま机に向かい何やらぼんやりとした表情で本を眺めている里中の姿が目に入った。


この五月蝿い空間の中、よく集中して読めるなぁなんて思っていたら。


本のページを捲る際、顔を少し上げた里中と視線がぶつかった。


どきり、としてすぐに視線を逸らす。


さっきの今でどうしたら良いか分からない。




「何、あんた里中と目が合って照れてんの?」


縡ちゃんがにやにやして此方を見てくる。


もぉ、笑い事じゃないのにっ!



「照れてるとか、そんな状況じゃなくてっ

どんな顔をしたら良いか分からないのっ!」