里中はぽかん、とした顔になって。


それから“有り難う”って言ってくれた。


こんなあたしでも、少しは里中の心を楽にさせてあげる事が出来たのかな、なんて烏滸がましいかな。



「…そろそろ次の授業始まるな」


「そうだね」


「教室に戻ろうか」


「うんっ!」



二人並んで、くるりと踵を返したのは良いけれど。



「あぁぁぁぁあっ‼︎」



そこであたしは重要な事を思い出した。


別に忘れてた訳じゃないけど。

里中の涙を見て、その“ショック”が頭から飛んでいたんだ。



「な、何、橋本」


あたしの奇声にびくりとした里中は異物を見る様な目で此方を見てくる。



「…キス」


「は?」


「さっきどうして、あたしにキスしたの⁉︎」



「…‼︎」