「…好きな奴が出来たとは言ってたけどさ。
いくら何でも早過ぎ…っ」
“俺、心の準備なんて全然出来てなかったし”
そう独りごちる里中。
胸がぎゅっと締め付けられる様に痛くて、代わりに里中の左手をぎゅっと掴むと。
里中は恐る恐る顔を上げた。
里中の目尻からは、ぽたぽたと数滴の涙が零れていて。
色白な頬を濡らしていた。
泣いて、たなんて。
「だ、大丈夫?」
大丈夫かそうでないかなんて見れば丸分かりなのに。
わたわたしながら訊ねるのはそんな気休めにもならない一言。
「あいつは、もう新しい彼氏作って。
俺なんかの事、もうどうでも良いのに」
「――っ」
「俺はまだ、あいつの事どうでも良いなんて思えない。
俺だけがまだ――
何か、すげぇ情けない」


