「里中、里中っ!」



渡り廊下を歩き切って校舎の中に入ってからも
里中はあたしの腕を掴んだまま廊下を歩いて行く。


あたしの呼び掛けに答えてもくれない。


あたしの声はちゃんと聞こえているんだろうか。


…届いているのだろうか。



掴まれた腕は痛くて、頬は赤いままで

今の心臓の音は色んな音が流れている気がする。


ドキドキ、キスされたなんて信じられない。


ドクンドクン、さっきから里中が一言も声を発してくれないのは何で?


不安と期待が入り交じった不整脈の様な何かが身体中を支配している。



「里中、ねぇ里中ってば!」


「……。」