「だけど、苛々していたのも本当なんだ」
「里中…」
「昨日、話を聞いてた橋本だから言うけど本当は全然平気なんかじゃない。
考えれば考える程――」
「里な…」
苦しそうな顔をした里中を見ている事が出来無くて、思わずその身体に触れようと手を伸ばした時だった。
『あ!』
里中の背後、あたしの正面からトーンの高い声が聞こえて。
声の主を認めたあたしは凍り付いた。
里中もその声の主が分かったのか
ゆっくりと後ろを振り返る。
『泉…』
「…星花(せいか)」
其処には気まずそうな顔をして此方を見ている里中の元、彼女。星花さん。
その隣には何処かで見掛けた事のある同じ学年の男子。
二人並んで歩いてるって事は、まさか、まさか――!
ドク、ドクと心臓が嫌な音を立てる。


