「…何?」



里中は今度は振り返らず、前を向いたまま返事をした。



「~っ」



そして勢いで言ってしまった次のあたしの言葉は本望だった。



「あ、あたしの事、好きになりなよ!」



「…はぁ?」



その突拍子もない告白に、里中は眉を潜めて此方を振り返った。



黒い髪、白い肌、薄い唇。

黒縁フレームの眼鏡の奥の焦げ茶色の瞳が
あたしを、捉える。



ドクン、と胸が高鳴る。


苦しい程に。



「お前、何言って――」



「あたしさ、結構モノマネとか得意なんだよね!」



「はぁ?」



「例えば、そうだ!

古典の谷本先生のモノマネ!」



妙にテンション高く宣言して、


“助動詞の活用形~

こーきーくるっくれっこ、こよ…!”

なんて先生の声色を真似て再現してみたら。