里中はさっきから片手を口元に宛てながらぼんやりとしている。
あたしにしたキスがよっぽど心外なものだったのか、それとも…。
「犬、可愛かったね」
「…ああ」
ねぇ、里中。
今、誰の事考えてる――?
「…あたし、そんなにハムスターに似てるかな?」
「…ああ」
「里中、別れよう」
「…ああ。
…え?」
そこでようやくあたしの言葉に反応して振り向いた里中に笑顔でいよう、と努める。
「…もう良いよ、」
だってあたしは里中の事を振り向かせる術さえ思い付かない。
星花さんに敵いっこないんだ。
「一緒に登校したり、お弁当食べたり、こうやって帰り道デート出来たり、楽しかった」


