2【出会いはカカト落とし】
間近で見上げると、花弁は緋色一色ではなかった。
少し黄色の筋が走っていた。
わずかに混じる同系色が、花の緋色をますます鮮やかに見せているのだ。
「それにしても、見事な緋色。
本当に燃えてるみたい」
たわわに花を抱く梢に、恐る恐る手を伸ばしてみた。
ひんやりとした木陰の涼気が指先に触れる。
花蜜の甘さが、しっとりと鼻先に香る。
どちらも熱がないのが、逆に不思議な気がした。
妖しい美しさに魅入られた私は、もっともっと近くで花を感じたくて、幹に抱きつかんばかりに近づいた。
すると、だ。
ぐっと踏み出した足が、ぶにゃりと柔らかいものを踏んだのだ。
「ひぇ!?」
「痛っ!」
踏んづけたのは、同い年くらいの男の子だった。
「・・なに・・すんっ、だよ」
彼は鳳凰木の根本で寝転がっていたようだ。
私は、どうもお腹を踏んだらしい。
サンダル履きの足が、カカト落としの如く、深々とめり込んだ様子だ。
苦悶の表情を浮かべた彼は、地面でくの字になって呻いた。
「すみません!」
私もびっくりして声がひっくり返った。
それでね、不運ってものは重なるもので・・。
「きゃああああ!」
驚きうろたえる私達を、一陣の海風が煽ったのだ。
強烈な風だった。
レースの日傘を持って行かれそうになって、反射的に両手で掴んだ。
となると、必然的にお留守になるのは、ふわふわのフレアスカートである。
ぶわぁっ!
スカートはお猪口よろしくめくれあがった。
しまった!と思っても、時すでに遅しだ。
咄嗟の機転で後ろを向き、せめてもの気遣いを示した私を誉めてほしい。
「水色ストライプ!?
ちょっと、おいっ!
まる見えかよ!」
引き続き、足下から男の子の悲鳴が聞こえる。
非常にうろたえているようだ。
さもあろう。
いきなり現れた女がお腹を踏みにじり、その上、下着を大公開だ。
こんなの、ラッキースケベなんかじゃない。
ただの逆セクハラである。
はた迷惑な海風はすぐに止んだ。
めくれあがっていたスカートも、元通りにふわりと太股を覆った。
しかし、私の心の傷もとい、逆セクハラを受けた彼の衝撃は、元へは戻るまい。
もしかしたら、痴女として、お巡りさんに通報されるかも知れない。
そうしたら、逮捕、拘留、立件、起訴、そして、刑事裁判からの有罪・・。
そんな・・。
旅先で前科一犯がつくなんて!
世間様は当然のことだが、友達や家族にも顔向けできないっ!
私は一気に進退窮まった。
間近で見上げると、花弁は緋色一色ではなかった。
少し黄色の筋が走っていた。
わずかに混じる同系色が、花の緋色をますます鮮やかに見せているのだ。
「それにしても、見事な緋色。
本当に燃えてるみたい」
たわわに花を抱く梢に、恐る恐る手を伸ばしてみた。
ひんやりとした木陰の涼気が指先に触れる。
花蜜の甘さが、しっとりと鼻先に香る。
どちらも熱がないのが、逆に不思議な気がした。
妖しい美しさに魅入られた私は、もっともっと近くで花を感じたくて、幹に抱きつかんばかりに近づいた。
すると、だ。
ぐっと踏み出した足が、ぶにゃりと柔らかいものを踏んだのだ。
「ひぇ!?」
「痛っ!」
踏んづけたのは、同い年くらいの男の子だった。
「・・なに・・すんっ、だよ」
彼は鳳凰木の根本で寝転がっていたようだ。
私は、どうもお腹を踏んだらしい。
サンダル履きの足が、カカト落としの如く、深々とめり込んだ様子だ。
苦悶の表情を浮かべた彼は、地面でくの字になって呻いた。
「すみません!」
私もびっくりして声がひっくり返った。
それでね、不運ってものは重なるもので・・。
「きゃああああ!」
驚きうろたえる私達を、一陣の海風が煽ったのだ。
強烈な風だった。
レースの日傘を持って行かれそうになって、反射的に両手で掴んだ。
となると、必然的にお留守になるのは、ふわふわのフレアスカートである。
ぶわぁっ!
スカートはお猪口よろしくめくれあがった。
しまった!と思っても、時すでに遅しだ。
咄嗟の機転で後ろを向き、せめてもの気遣いを示した私を誉めてほしい。
「水色ストライプ!?
ちょっと、おいっ!
まる見えかよ!」
引き続き、足下から男の子の悲鳴が聞こえる。
非常にうろたえているようだ。
さもあろう。
いきなり現れた女がお腹を踏みにじり、その上、下着を大公開だ。
こんなの、ラッキースケベなんかじゃない。
ただの逆セクハラである。
はた迷惑な海風はすぐに止んだ。
めくれあがっていたスカートも、元通りにふわりと太股を覆った。
しかし、私の心の傷もとい、逆セクハラを受けた彼の衝撃は、元へは戻るまい。
もしかしたら、痴女として、お巡りさんに通報されるかも知れない。
そうしたら、逮捕、拘留、立件、起訴、そして、刑事裁判からの有罪・・。
そんな・・。
旅先で前科一犯がつくなんて!
世間様は当然のことだが、友達や家族にも顔向けできないっ!
私は一気に進退窮まった。
