先生、僕を誘拐してください。




「先生、チーズケーキ作ったので食べてください。わざわざ来ていただいて――」

お母さんがテーブルにケーキを出したけれど、敦美先生は首を振る。

「いいえ。僕は家庭訪問に来たんじゃありません。お子さんの将来について話したくて来たんです。唾を飛ばすだけなので下げてください」
「すいません。うかれちゃって」
おろおろするお母さんをフォローもせずに先生は私を見た。

「そっちに座ってくれ。時間はそんなに残されてないんだぞ」

先生は、いつもの熱血な顔で、けれど私の子供じみた反抗を抑圧するような表情だった。

「期末テストの成績ですが、二年よりは順位も落ちましたし授業態度も提出物も問題ないので、評点にはあまり関係ないと思ってください」

お母さんにと私に、現在の評点を見せてくれた。

『5.0』満点中『4.3』
思ったよりも悪くなかった。

「うちの学校は『3.8』から受けられる推薦入試はたくさんあるので、もし武田に少しでも意思があるならば、就職ではなく進学を進めたい」