先生、僕を誘拐してください。


「え、うん。てか先生もう来たの? 早くない?」

指定した時間より40分ぐらい早い。

「ええ。お父さんにお線香をあげたいんですって」

「ふうん」

仏壇のある和室へ向かうと、お父さんの遺影に手を合わせている先生がいた。

チョコバナナが似合わない大きな手を合わせて、拝んでいる。
その姿がなぜか少し不安になる。

「先生、いらっしゃい」
「お、帰ったか。先にお邪魔してるぞ」

先生はいつもの先生の顔で、私が感じた気持ちは杞憂だと確信した。