ルナは制服に着替え食事を済ませたあと車に乗り込んだ。


「姫、本日はご誕生日ですね。おめでとうございます」


車を運転しながら峰岸は言った。


そういえばそうだ。今日は私の17歳の誕生日だ。


「忘れてた...。ありがとう、みね」


私は峰岸のことは『みね』と呼ぶことが多い。『峰岸』なんて長ったらしくて嫌だ。


「御自分のお産まれになられた日ぐらい覚えていらっしゃってください。」


「......そう、だね。お母さんの命日でもあるもんね」


私がそういうと彼はしまったと言わんばかりに顔を歪ませた。


「ごめん!気にしないで!」

笑顔で言う。

「...姫、本日のご帰宅時間は何時頃になられますか」


「たぶん5時とかだと思うんだけど...どうして?」


「いえ、お迎えに行こうかと思いましただけです」


みねにしたら珍しい...


......はっはーん、これはもしやサプライズパーティーだな??


心の奥底でニヤリと笑う。


その笑みが顔に出ないようにわざとらしく訊ねてみた。


「何か企んでるの?」


「えぇ。姫の誕生会を開こうかと」


「え、サプライズパーティーとかじゃないんだ!?普通にそれ言っちゃうんだ!?」


「さぁ、着きましたよ姫。本日も頑張ってその悪い学力を伸ばしてきてください」


にっこりとこれまた厭(いや)な笑みを浮べドアを開ける執事に向けてひと睨みする。


「無視ですか!?いってきますっ!!!」


嫌味たっぷりに言ってやった。


「あっはは。今でもブスなのにお怒りになられるとますますブスですね姫」

「なんですってー!!?!?」


ルナの怒りは頂点に来た。


「いいんですか?ここで大声を出してしまわれて」


またまた厭(いや)な笑みを浮かべる。


峰岸が言っていることは確かに一理ある。
ルナはこの国じゃ名が通る財閥の令嬢。

それを黙ってこの高校に通っている。

もちろん、ここの校長さえも知らない。

もし、バレたりでもしたら、ちやほやされて媚びを売られるのが目に見えているからである。

下唇を噛んで怒りを鎮める。


「ばーか!!!」


それだけ言うと教室へと向かった。

「いよいよ、ですか......」

春風が桜を舞い上がらせながら燕尾服の裾を揺らした。